上記の定義の変遷についての詳細は、障害・医学・教育会誌Vol.8(2006)の「アメリカにおける
知的障害の定義の変遷を参照。
この1961年の改訂の大きな特徴は
①知的障害を知能テストから得られる知能指数だけで決めるのではなく、社会能力を加えて診
断することにさたことがある。
②また第2に従来からIQは70を基準としていたが、この定義では85に跳ね上がっている。この時
代はまだ米ソの冷戦期にあり、これは1959年のスプートニックショック(ソ連がガガーリンを宇宙
飛行士として有人飛行に成功したこと)として知られている米国の反応の一部である。つまりソ連
とくらべて米国の教育レベルの低下が問題視された。知的障害の定義におけるこの知能指の切り
上げは、米国の福祉政策の拡大ではなく、知能レベルの移民の受け入れの拒否、また、通常学級
から成績不良者を特殊学級に追いやることにあった。多くは黒人層が該当し、後の公民権運動など
にも影響した。
このような社会的・行政的状況により知的障害の範囲は医学的な定義はなく、行政的に決められる
ものであると考えられる。